2012/06/25

書評:コーヒーが廻り世界史が廻る

「コーヒーが廻り世界史が廻る」(臼井 隆一郎著)と言う本を読みました。

表紙(アマゾンにリンクしています)



コーヒーの歴史を誕生から現在にいたるまで事細かに知る事が出来ます。都市の駅の側には必ずと言っていいほどある、スターバックスやドトールなどのカフェ。そこで出される一杯のコーヒーがどんな経緯で存在しているかをしる事が出来る内容でした。文章自体も面白く、読みやすい一冊です。
コーヒーは最初は、イスラム神秘主義の僧侶、スーフィー達に飲まれていたようです。そこから徐々にヨーロッパに広まって行ったそうです。広まったのは17世紀ごろですから、かなり新しい飲み物なんですね。コーヒーにまつわる様々な話を聞く事ができます。コーヒーが好きな人、カフェで働いている人には、教養の1つとして是非おすすめしたいです。目の前にある一杯のコーヒーがどんな道を歩んで来たのか。これを読む前と後ではコーヒーの味が違うように感じてしまうでしょう。

タイトルに「世界史が廻る」とありますが、確かに世界史が廻ったと思うような話は出てきます。個人的に一番印象深かったのが、ブラジルの第一次世界大戦の参戦理由の話です。
ブラジルは植民地として、大量のコーヒーを生産していました。輸出の9割強をコーヒーが占める勢いです。しかし、コーヒーは天候などの影響を受けやすく生産量が不安定で、かつ価格も不安定な物でした。大豊作の年には、いわゆる「豊作貧乏」に見舞われてしまうため政府がコーヒー豆を買い取り保存するなど、価格の均一化に苦労していました。そんな時第一次世界大戦が始まりました。ブラジルでは、ドイツへのコーヒーの販路が失われ、また豊作などの影響で大量のコーヒー豆が余っていました。困ったブラジルは協商側、イギリスやアメリカに販売を試みますが、「ブラジルのコーヒー豆を買う代わりに第一次世界大戦に参戦しろ」と言われ、結果参戦する形になりました。
コーヒーを買ってもらうためにブラジルは第一次世界大戦に参戦したと言う話です。

それとこの本でさりげなく勉強になるのが、商業の在り方と資本主義についてです。17〜20世紀ごろのヨーロッバは、市民社会と言う原理が広まると同時に資本主義が台頭し始めた時代であると言えます。その資本主義がどういうものなのかが垣間見えたように思います。資本家、植民地、労働者。大豊作の結果畑でコーヒー豆を焼き払うブラジル。資本主義の黒い一面が顔をのぞかせる内容だったと感じます。




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